福井市(旧美山町)のログハウスに独り棲む爺です。一度お越しになりませんか(1)

 平成6年のことですから20年も前のことになりますが、福井市(当時は美山町と言いました)の杉林の中にログハウスを建てて、芦屋市から移り住んだ爺が独り暮らしをしています。お暇な折にでも一度お越しになりませんか。お構いなど出来ませんが、お越しになる方は何方でも歓迎です。

 ボクはこんな爺です。

1.1933年の生まれですから、当年81才になります。

2.平成1年に心房中核欠損症の手術を受けた妻は、50才にして意識の戻らぬまま集中治療室で事切れました。

3.一卵性双生児の息子は、妻の没後2年経ち3年が経つと、夫々結婚し巣立って行きました。

4.マンションに独り残されて、老後をどうするか思案の末、戦時中疎開していた福井の山の中にログハウスを建て、独り暮らしをすると決めて平成6年4月移り住みました。

5.自ら設計したログハウスで年金生活を始めて5年が経った頃、沸々と燃え上がる衝動を抑え難く、中米のグアテマラに出掛け、そこの風土と素朴なインデヘナ(先住民)たちの暮らしに魅せられて、150坪ほどの土地を買いコロニアル風の家を建てて、日本の冬の寒い3ヶ月だけ向こうで暮らす、「日本と外国との棲み分け」をはじめました。

6.見るもの聞くもの皆珍しく夢中に過ぎた7年でしたが、結構なことって長続きしないもので、大腸癌になって一時帰国を余儀なくされ、その不在の間に建てた家が不法者に乗っ取られたりして、とうとう土地も家も手放して、今は静かにして日本で余生を送っています。

7.二人の息子は高校までは同じ学校に通ってましたが、大学は希望するところを出て二人とも神戸にいます。夫々に二人と三人の孫がいて、来年卒業するのや今年入学したのやらが、息子や孫の面倒を碌に見ず自分勝手に生きて来たボクを、「おじいちゃん。おじいちゃん」と慕ってくれるのが何よりも嬉しい。

8.涙ばかりの年金で貧しく暮らしてますが息子にも引導を渡して、支給される年金は残さず全部使い切ることにしています。粗食を喰らい弊衣を纏えども日々心豊かに生きていたいと、読みたい本や聴きたいCDには金を惜しまないことにしてます。

9.学生の頃、京都の下宿で先輩連中からコーヒーを嗜むことを教えられて以来、日に5杯のコーヒーを欠かしません。コーヒーのない暮らしなどボクには考えられない。酸味の勝ったコクのあるコーヒーを手間隙掛けてドリップでいただいてます。

10.貧しい調度品に囲まれた生活ですが、ちょっと自慢する音響装置があります。この装置を買って帰った時は、平素は何も言わない妻から「ちょっとした外車が買えませんか」とチクリ言われました。巨大なスピーカーを真空管アンプで鳴らしてますが、主として弦楽四重奏曲などの室内楽を聴きます。

11.独り暮らしのボクにパートナーがいます。ミシェールと呼ぶ9才になる巨漢のボルゾイ犬です。優美で従順なミシェールは何処へ連れて行っても、歓声を上げて迎えられます。ボクは81才、ミシェールは9才、どちらが先に逝くのでしょうか。何としてもミシェールの最期はボクが看取ってやりたいと願っています。