「さくら貝の歌」を知ってますか。

 懐かしい「さくら貝の歌」がFMから流れて、暫し我を忘れて聴き入ってしまった。
「さくら貝の歌」と言う曲をご存知の方がいらっしゃるでしょうか。
 今から60数年も前のこと。疎開先の福井で高校生だった頃、TVはなくラジオはNHKだけ、ラジオを聴く以外に娯楽もない田舎で、ケースの横をバンバンと叩かないと放送が途切れるラジオの歌に、耳を澄ましたものである。
 その頃、流行歌や歌謡曲とは言わず、「ラジオ歌謡」と呼ばれた曲に「さくら貝の歌」があった。高校1年だったと思うが、その歌詞を未だに鮮明に憶えている。
 
 一. 美しき(うるわしき) さくら貝ひとつ
    去りゆける 君に捧げん
    この貝は 去年(こぞ)の浜辺に
    われひとり 拾いし貝よ

 二. ほのぼのと うす紅染むるは
    わが燃える さみし血潮よ
    はろばろと かよう香りは
    君恋うる  胸のさざなみ

    ああなれど 我が想い儚く
    うつし世の 渚に果てぬ

 誰が歌ったか憶えていないし、作詞したのが誰で作曲家は誰か、ぼくは知らない。ただ、この詩におませな高校生は魂を奪われ、60年も経った今なお諳んじている。
 こんな美しい詩情豊かな日本語は、何処へ行ってしまったか。特に二番がいい。口に出せば涙が滲んでくる。
 三好達治が散策し、高校生の頃にさんざ歩いた三国の浜辺に、青春の思い出を探しに出掛けてみますか。うつし世の儚さを知り、涙を流すのでしょうか。