真空管へのノスタルジア。

 写真は我がログハウス・ホールのボク専用のボックス席です。

 真空管への郷愁は、未だ物思わざりし青春時代の郷愁と重なる。
 京都に下宿していた当時、大阪でアルバイトして得た金を持っては、日本橋のジャンク屋の店先で、使い古るしの真空管を買い漁ったものである。汚いナリをした貧乏学生のボクは、そこいらのジャンク屋のオッサンとは、心安く冗談を言い合う常連だった。
 前回のブログで触れた、ズングリと太めのST出力管・42などは数本で100円。フィラメントこそ切れてはいないが、グロー(若い人はお分かりかな。ホヤの中に青い環状の光が発生するのをグローと言った)が出て、火を入れて指で弾くとSPから「カーン」と言う音がする、つまり寿命のエンドが来ている徴みたいなものである。
 42プッシュで30Wぐらいのパワーが出たのか。映画館で場内アナウンスに使われるアンプを頼まれては作った。SPは電磁型で能率が悪く42プッシュではパワー不足、その上ジャンク屋の真空管で作るので、よく故障しては文句言われたな。
 鉱石ラジオから始まって並4・スーパーヘテロダインの揺籃期があって、音質追求にウツツをぬかすGT管・MT管プッシュの発達期を経て、ST管・2A3プッシュに回帰したのが、ボクの真空管の遍歴であったな。
 そして今また、老いさらばえてシャーシーの裏側を見る気も失せた真空管アンプに、魂を奪われヨレヨレになっている。「魚釣りは鮒から始まって鮒に終わる」か。