灯火を親しみ、じっくりと室内楽に耳を澄ます佳き季節です。

 間もなく銀杏は黄葉を地に落とし、庭を黄色に染めてくれるでしょう。

 ここ最近になって、就寝前に好きな弦楽四重奏曲を聴くことにしている。
 「音楽は音を耳で聞くもの」と思って来たので、レコードのライナーノートやCDのパンフなどに目を通したことがないボクには、音楽をめぐる知識の持ち合わせは皆目ない。つまり何も知らないので、友人たちが音楽談義を始めたりすると、感心しながら聞いているだけ。
 しかしフロア・スタンドを傍に引き寄せて、我がBOX席でライナーノートを見ながら聴くようになってから、長いあいだ聴き込んで来た名曲の数々が、次元を広げて新鮮に聞こえて来る。「こう言うのに目を通すのも、まんざらでもないな」と、中学生のように目を輝かせて読んでいる。
 昨晩、『ハイドン弦楽四重奏曲にアレンジされた「十字架上の七つの言葉」』を聴いたが、これはハイドン自らが管弦楽からアレンジしたものだということを、初めて知った。そう思って聴くと、また新しい感慨に耽って、楽しみが倍増したというもの。
 ボクは「目で読む知識は、音楽を純粋に聴くには邪魔にしかならないもの」と思って来たし、今なお間違ってはいないと確信しているが、「知って得することもある」な。
 これからは、あまり片意地張らず、解説書なるものにも目を通しましょう。