寝る・食う・ミシェールと散歩する以外、終日ボクは此処に腰掛けている。

 ベッドにいる6時間、食事の1時間、ミシェールと歩く2時間と家事に費やす2時間、合わせて11時間を除く、残り13時間程をボクはこの机の前に腰掛けて、読み書きをし音楽を聴いている。

 机の上にはオモチャ道具の他に、パウル・クレーの小さな『教会のある街』を置いているだけ。花でも飾ろうと思うのだが、花屋さんに行って妻のため祭壇用の花は買っても、「机の上の花なんてモッタイナイ」と買わずに帰ってくる。
 「男寡に蛆が湧く」と聞くが、掃除や洗濯はマメにやるから蛆など湧くはずはない。ただ男の独り暮らしには、いかにせん家の中に華やかさがない、潤いがないな。悲しいがボクと同じように干乾びている。
 こうして写真にして「我が居場所」を眺めやると、そこに繋がれて長いこと働いた事務机と変わらないなと思う。
 ボクには残り少なくなってしまった1日の半分を過ごすところじゃないか、楽しい空間でなければな。「俺は無粋な男だからな」と、残り人生を惨めたらしく生きていていいのか?
 この潤いのない机の写真を見て、ボクは「少し贅沢でもいい、好きな左ハンドルの車に乗り換えましょう」と決心した。