昨日来た訪問客が隣の茂みを見て、「おや、極く最近イノシシが来ましたな」と言う。

 昨日、我が家を訪ねて来た客が、エントランスの横の茂みを見て「夕べあたり、大きなイノシシが通りましたな」と言いながらお勝手から入って来た。
 言われるまで気が付かなかったが、見れば何かが茂みを搔き分けて通った跡がある。

 この辺の田圃は、例外なくイノシシ除けに電流を流した鉄線で囲われていて、ボクは此処へ来て17年になるが、山裾や茂みを通るイノシシは見ても、田圃の中にいるイノシシを見たことがない。
 ミシェールは、庭を狐が横切ろうと大きなカモシカが庭の中にぬっと立っていようと、吼えたりはしない。ただ立ち上がって緊張した姿態で、じっと見詰めているだけ。
 夜も8時を過ぎるとデッキから部屋の中に入れるので、夜中出没するケモノには気が付かないだろう。
 ボクは家の周りに動物たちの姿を見ると、嬉しいしホッとする。動物が棲息する生活圏を人間がどんどん侵食し、仕方なく餌を求めて人里近くに現れると、鉄砲を持った人間に撃ち殺されるのだ。
 5,6年前には、熊打ちのハンターが姿を見せ、3年ほど前には我が庭に子熊が現れたりしたが、禁猟区にでもなったか、鉄砲を持った連中は来なくなった。
 ひたひたと自然の荒廃が迫り来る中で、この辺りが何時までも動物と共生できる山里であるよう、願うばかりである。
 訪問客は8時になる前に帰ったが、かなり暗くなった我が家に明かりが点いた。