ソプラノよりアルト、ヴァイオリンよりヴィオラ、管楽器は木管楽器と、だんだんマイルドなものが好くなって。

 冬に追い立てられ秋は急ぎ足で行ってしまうが、ここ暫く透き通るような秋空が続いて嬉しい。
 ミシェールとウォーキングする朝6時には姿を見せない赤トンボが、陽の当たる9時頃になると何処からか出て来て、そこいら中で音も立てずに羽をキラキラさせながら群舞する。「秋よ、長く此処にとどまれかし」。
 こんなに晴れ渡って気持ちのいい静かな秋の日には、音楽はいらない。ブログし終えたらデッキに出て、静謐の中で鳥の声やスダク虫の音を聞きながら、「ルソー」を読むとしましょう。
 「こんな佳き日に音楽はいらない」と書いて思い当ったが、年を古る毎に円やかで包み込むような音が好くなって来た。キィキィのヴァイオリンより温もりのあるヴィオラがいいし、ソプラノより断然アルトだし、管楽器の金属音がイヤでクラリネットオーボエ木管楽器ばかりを聴いている。
 これでもか・これでもかと鍵盤を叩きつけるようなピアノ演奏より、そっと鍵盤の上を滑るようなピアノがいい。だから新進気鋭の若手ピアニストより、圧倒的にホロヴィッツルービンシュタインのものを聴く。音響の洪水より緊張感に溢れる室内楽無伴奏なものがいい。
 これはもう、音楽愛好家が歩む典型的なエイジング・シンドロームでしょう。粒立ちのいいものより、角が取れて丸みを帯びて滑らかなものに、心打たれ安らかになる。
 避けては通れない下り坂。気持ち楽でも下り坂の先には、待つべきものが待っている。
午後の散歩に出掛けるミシェールです。

 散歩から帰って来て、デッキの上で「おやつ」を探すミシェールです。