木下杢太郎と言う人は、真に粋な人だと思うけど。

 夜半過ぎから雪が来て、また春は遠くに行きにけり。
 今日はプールの日だけど、ガレージの前にうず高く積もった雪にうんざり。お休みすることにした。
 もう1週間もすれば、修理に出したスピーカーが戻って来る。その間辛抱してTVのスピーカーで聴いているが、今朝はエルガーの「朝の挨拶」を聴きながら「木下杢太郎」の詩集を読んだ。
 木下杢太郎、ご存知の方は少ないだろうな。北原白秋に較べて一般的に知られていないが、大正年間には広く読まれた詩人である。
  
          「道のあちこち」

         道の向うを女が通る
         頭巾目深に通る。

         こっち側をば男がゆく
         寒そうにゆく。

         誰も知らない夜道だもの。

         それも急ぎでなさそうだもの。

         たとひ知らない人だとて、
         一緒に行ったってよかろうにね。

 何と洒脱にして粋な詩でしょう。パリーの裏町あたりの、ガス灯の薄明かりの中を、道路の両側を女と男が急ぐともなく別々に行く姿と、ボクが取り出したエルガーの「朝の挨拶」とが妙に一つになって、粋な空気が流れます。「こんな取り合わせもあり」ですか。