庭のモクセイの芳香が、散歩する僕らの後を追いかけて来る。

 2,3日前から庭のキンモクセイが芳香を放ち、朝晩ミシェールと散歩する僕らの後を追いかけて来る。家の前の道を西に歩く僕らを、東風でも吹くと可なり離れたところまで芳香が流れ、朝のしじまに秋の香りが漂う。

  
    
     
 
 昨日プールで、「庭のキンモクセイの香りで、むせ返るようですよ」と言えば、何人かの婆さん連中が顔を見合わせて「一度伺っていいですか」と言う。もっと若い女性ならいいのにと思いながら、「どうぞ、どうぞ」と愛想よく応えた。
    
     「夜霧とも木犀の香の行方とも」 中村汀女