エロチシズムの極致のようなコクトーの詩です。

 堀口大学訳の「コクトー詩集」に、こんな目の覚めるような詩があります。

          
           「黒奴(くろんぼう)美人」

        
          黒奴美人は半開きの戸棚です

          中には濡れた珊瑚がしまってある

        
 何と瑞々しい感性でしょう。ボクにこんな感性はなく、あるのは惨めたらしい助平爺の消え残る欲望だけです。
 
 お口直しに、同じコクトーのこんな詩はいかがでしょう。

 
            「いい気候」


           またいい気候の季節が来た

           閉じた窓を開け放つと

           家々の

           二階と

           階下(した)とで

           話をする

           声が聞こえてまいります

 
 初々しい感性で、人の温もりを謳い上げるコクトーです。