こんなヘッセの手紙を読んで、どんな感想を持ちますか。

『ヘッセからの手紙(毎日新聞社刊)』に読みました。
 
 「親愛なるヴェーバー様」
 
 じゃあ、あなたも70歳におなりになったのですね、そして「われわれのような人間はこの先どうなるのかわからない」という思いを、またしても新たにされたことでしょう。私はそれに同調できます。
 そしてゆっくりとやってくる死、絶え間ない苦しみや、増大してくる肉体的、精神的な衰えのために、局面は今より好転することはありません。しかしブーバーのような賢者との交わりを通して(「優れた哲学書や文芸作品を通して」と理解していいでしょう《私見》)、あるいは音楽を通してならきっとあり得ます。孤立無援の中でのこれらの慰めは、たとえば老齢の孤独と閉塞感、ゆっくりとやってくる退屈な死が どれほど陰鬱さを増し、私を世間から隔離しようとも、依然として訪れてくれるのです。私たちはこれらのことを先刻承知していたはずです。(中略)世間をあるがままにしておきましょう。この苦い飲物に数滴の美酒を幾度も繰り返し混ぜましょう。

 絶え間なくやってくる老いの孤独と閉塞感が、どれほど私たちを世間から隔離しようとしても、本を読み音楽を聴いて得られる慰めが、私たちに訪れてくれると言います。だから世間を論うことはせず、苦い世間と言う飲物の中に、これら慰めの美酒を滴らせていただきましょうと。
 この手紙は、こよなく本と音楽を愛するボク宛てのヘッセからの手紙のように思えてなりません。最愛の妻が先立ち、子供たちもボクの足元から旅立って林の中で一人になっても、ボクは読書と音楽に慰められ生きています。
 モンテーニュの「随想録(エセー)」を誰に貸したか忘れて思い出せないので、英訳のものをオーダーしたところ3日も経たないうちに届いた。1,300ページを超えるもので、毎日5ページ読んでも1年はかかりそう。1年間モンテニュー漬けになっていましょう。