年ふりて、ボクはだんだん小さくなっていく。
大きな額縁に入っているタペストリー。此処に来て17年、何度も部屋の模様替えをするが、この大きな額縁だけはボクの間尺に合わず、移動させたことは一度もない。
寒くなると言う予報の割には、日が差して朝6時の室内は9℃。夜半の雨上がりの道をミシェールとするウォーキングに、格別寒さを感じない。
朝の行事が済んで、エミール・ギレリスとアマデウス・カルテットが演奏する「シューベルト;ピアノ五重奏曲『ます』」のレコードを取り出した。『ます』を聴きながら詩でも読むかと、"Walt Whitman:Leaves of Grass"の中に、こんな短い詩を見つけた。
To Old Age
I see in you the estuary that enlarges and spreads itself grandly
as it pours in the great sea.
簡明な英語で、ボクみたいな高校生程度の英語力でも読める。
ボクなんざ、年ふりて思考や行動の範囲はだんだん小さくなり、判断力やレスポンスは年々減退して、チマチマと見っともない老人になって行くと言うのに、
「老人は大海原に注ぎ込むにつれて、身の丈を伸ばし大きくなっていく、『入り江』のよう だ」
と、ホイットマンは年寄りを敬愛し賛辞するのだ。
ボクは老衰した我が身を振り返り、ますます身を縮める。