「60を超えたジジとババは、もう投票しないで下さいな。頼みますわ」。

 ボクは福井の旧市内から20キロほど離れた、福井市の山里に棲んで17年になる。
「お世話になった人から、『あの人に入れてくれよ』と言われたら、断れんで」。
「あの人は何年も地元のために尽くしてくれた。矢張り地元の人でないとアカンわ」。
「先代は面倒見のいい人だった。その息子さんを落選させるわけにはいかん」。
「中央にも業界にも顔が利く人でなきゃな。それならあの人じゃないか」。
 この辺のジジババの投票動機は全てこれ、地縁・血縁に地盤看板。
 コレは何も福井に固有なことではなかろう。ジジババの投票率は途轍もなく高い。選挙に行かない若者の比ではない。
 家族が、時には近所が誘い合って、ジジババを投票所に連れて行く。この票がロクデモナイ奴に集中し、いい加減なのが議員になる。これで福井が日本が良くなる筈はないわ。
 自分の投票行為が、政治の流れを変え日本の国を発展させる阻害になっている、という意識など微塵もなく、「今日も国民の義務を果たし、気持ちがええわな」と、意気軒昂たるジジババは老害を撒き散らして、ますます長生きをする。
 78になるボクが頭を下げて頼みますよ。
「60を超えたようなジジババは、もう選挙には行かんで下さい。そんなこと若いもんに任せりゃいい」。
 庭の花梨に小さな黄緑色の芽が出てきた。

 季節は確実に巡って行く。時代も変わらなきゃ。