犬は生き物ですから、感情も意思も尊厳をも持っています。ミシェールはボルゾイという種類の犬です(3)

 ボクは福井へ移り住む前、芦屋に長くいた。ご承知のように、そこにはボクらの世界とは隔絶した、とてつもないお金持ちが大勢住んでいて、気が遠くなるような大邸宅が軒を並べ、広大な庭には四季折々の花が咲き、見たこともないノーブルな犬が走り回っていた。 
 その中に、ボルゾイとコモンドールがいた。他にもいただろうが憶えているのは彼らだけ。コモンドールの実物をご覧になった方は少ないと思うが、一度見たら忘れらないほどユニークな被毛と体型をしている。(コモンドールへの熱き思いは、別の機会にしますか)
 足元でチョコチョコと、文字通り玩具(トイ)のように走り回る犬ではなく、わっと大きくて、ゆったりとした存在感のある犬が好きなボクは、初めてボルゾイを見て、背が高く・足の長い・スタイリッシュで高貴な姿態に「飼うなら、こんな犬だな(その時はボルゾイという名も知らなかった)」と、完全に舞い上がってしまった。
 動物図鑑と首っ丈、買ってくるのは犬の本ばかり。女房は「この頃は犬の雑誌ばかりですね」と言った。そのうち友だちを摑まえては、ボルゾイやコモンドールの歴史・生い立ちや特徴などについて、一角の犬談義をするような始末。
 犬の飼えないマンションにいたので、会社に行く駅までの行き帰り、塀の隙間から彼らの姿を覗き見しながら、太い吐息を吐いていた。ボルゾイやコモンドールに恋した30数年も前のことである。
 犬のこと、ボルゾイのことを書き出せば、100枚や200枚には収まらないので、ミシェールに限ることにしましょう。
 ミシェールもデッキの上では、いくらか暑くなって来たな。