リビング・ルームにあるガラクタを紹介しましょうか(2)

 転勤で全国を徘徊して、大阪の豊中の社宅にいたのは、子供が未だ高校生だった頃。そこへ引っ越して直ぐ、近くに洒落た籐の家具屋さんがあると聞いて女房と出掛けたが、スーパーなんかで見る毛羽立つような籐家具とは、全くグレードが違うものを目の当たりにして、二人とも完全に舞い上がってしまった。付いている値段を見て、またびっくり。
「いいものはいいけど、私たちのは手の届かないものね」と溜息を吐いて店を出たが、諦められないボクラは何度も見に行ったな。店の人と顔馴染みになるくらい行った。
 そして「少しずつ、何年もかけて揃えましょ」と決断しましたね。最初、買ったのが籐のリビングセット。

 お幾らしたか今は憶えてないが、買ってから1年ほどの間、演奏会に行く回数を減らしたり、ウイスキーをお安いものに格下げしたり、けっこう辛抱をしたな。
 次の年に買ったのがサイドボード。気に入ったのが店に無くて、鎌倉の本店(昔から鎌倉にある老舗)から取り寄せてもらった。

 余談だが、ボードの上にあるのはボクの好きな備前焼。清水の舞台から飛び降りたような気持ちで買ったものや、子供がログハウスの完成祝に買ってくれたもの、人から頂いたものものなどが、いつもボクを和ませてくれる。
 ロッキング・チェアーは、籐と言うだけの粗悪品。

 ロッキングチェアーには忘れられないことが。
 芦屋のマンションにいた頃、梅田阪急の一階コンコースに面したショーウィンドーに、木製で背もたれの高いアンティクーなロッキングチェアーが出ていた。スコットランド製でお値段18万円。毎日の仕事の行き帰り、溜息を吐きながら前を通ったものだが、躊躇してる間にショーウインドーから姿が消えてしまった。ボクは千載一遇のチャンスを逸したのだ。あのスコットランド、今頃は何処で誰が腰掛けているのでしょう。