弊衣を纏い粗食を食らう貧しい暮らしながら、心豊かに生きていたい。

 ボクは年金だけで生きている。扶養家族が無く扶養手当が付かないので、真に微々たる年金で他に収入は無い。
 借財もなければ蓄財もない。息子が二人いるが、生きてる間は彼等に負担をかけまいと思うから、掛け捨ての「火災保険」だの、癌系だから「癌保険」だの、山里では車は靴代わりに欠かせないものだから「自動車保険」など、安心料だと思って掛けている。
 だから食う物と着る物とを徹底的に始末している。始末しなければやっていけないからそうしている。10分程先の大野市のスーパーで食材を買うが、どこのスーパーでは何が安いかを知っている。僅かな違いでも度重なれば大きな金額になるもので、栄養のバランスを考えながらケチるだけケチっている。そこいらのカミサン連中は顔負けするだろう。
 若い頃はお洒落を自負していたものだが、過日、冬物の下着を取り出した際、寿命が来て余りにもみすぼらしくなっているのに気が付いて、本当に何年ぶりかで新調した。「心に錦を着てればいい」と思っている。
 暖房費の節減には厚着をすることと、訪ねる人とていない我が家では何枚も重ね着をして寒さを凌いでいる。家中の電灯をLEDと電球型の蛍光灯に取替えたし、夜は必要な箇所だけ明るければいいとスタンドだけ、天井や壁際の電灯を点けたことはない。水道は井戸だからタダ。
 ケチるところは徹底的にケチることにしても、少しは生活に潤いが欲しいもの。
 だから車は左ハンドルの外車。ガソリンはハイオクだし税金は高いわで、ボクは自己矛盾をしていると思っているが、外車はボクの40年来の切っても切れないパートナーである。
 酒は毎晩少し欲しい。日本酒なら1合、ビールなら350mlが1本、ワインはワイングラスに2杯、ウイスキーならダブル2杯、焼酎なら5勺と決めているが、いずれもややグレードの高いもの。ビールは普通ビールで、ウイスキーは12年もの、酒は特撰である。僅かな量だから、この程度の贅沢は許していただけるでしょう。
 それに欲しいと思ったCDと本は、躊躇することなく買うことにしている。ボクから音楽と読書を奪わないで!
 こんな暮らしの中でも、ボクはローンで物を買ったりはしない。車は7年か8年目に乗り換えるが、車のため毎月少しずつ車貯金をしている。
 ボクが死んだ途端に年金はストップする。もしローンが残っていて或いは借金が残っていては、子供たちには大変な迷惑だろう。そんなことにはならないように、残す財産は無いのだから負債も残さないで往生したいと願っている。
 それは孫の面倒も見ず、退職金とマンションを売却した金で、好きなログハウスを建て外国暮らしをするなど、気儘放題に生きて来た父親の、せめてもの償いでしょう。