「唱歌集」を広げ口ずさめば、他愛もなく目が潤んで来るのです(3)
今日は「成人の日」。朝から雨になったり雪になったり。
「唱歌集」の中に、こんな素敵な詩を見た。見るのも初めて、歌ったこともない。これを尋常小学唱歌として、子供たちに読み聞かせ歌わせたかと思うと、昔の教育のレベルの高さに驚嘆する。
『夜の梅』
一 梢まばらに咲き初めし
花はさやかに見えねども、
夜もかくれぬ香にめでて、
窓は閉ざさぬ闇の梅。
二 花も小枝もその儘に
うつる墨画(すみえ)の紙障子。
かおりゆかしく思えども、
窓は開かぬ月の梅。
題が「夜の梅」と言うのも凄い。昼日中、明るい日差しの中で見る梅ではなく、夜の梅に思いを寄せるのである。一人前の大人ではなく小学生の子供たちに、「夜の梅にも心寄せよ」と教えるのだ。
「咲き始めて、いまだ梢にまばらな花は、はっきりとは見えないけれど、夜にも流れる香が愛おしくて、窓を開けたままにして、暗闇の梅を見るのですよ」。
「花も小枝も、そのまま、墨絵のように障子に写っています。香が恋しいですが窓を閉めて、障子に映る月明かりの梅を見るのですよ」。
この優しさが子供たちの心に伝わったでしょうか。ボクは心に沁み通るような哲学的な詩を何度も何度も読み返して、涙を流すのでした。
2013年1月14日午前10時、着雪した庭の梅の小枝を写真に撮りました。